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SIMフリースマートフォンについてのいろいろなコト

急速充電と格安スマホ - 変遷と現状編 -

スマホバッテリーの大容量化に従い、その充電時間の改善が進んでいます。Apple製品や、3大キャリアのAndroid機は今では高速な充電が可能ですが、格安スマホのカテゴリーに属す製品はいま一つ対応が遅れており、下記のようなAnkerの急速充電器を購入しても、充電時間は変わりません。さらに急速充電と一概に言っても、複数の規格が乱立しており、規格に合わない急速充電器を使っても、低速充電(5V/1A)でしか充電できません。例えばドコモの急速充電2に対応したアダプターで、Apple製品は急速充電できませんし、AnkerのPowerIQは急速充電2に対応したスマホを急速に充電できません。このような規格の違いを、時代の変遷に従って整理してみました。

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低速充電(5V/1A)時代

今日のスマートデバイス(スマホやタブレット)はApple製品も、Android製品もUSB給電を前提に設計されています。USBポートの電力供給量は当初は規格上最大5V/500mAでしたが、USB給電がスマートデバイスに使われるようになった頃にはすでに5V/1Aが事実上一般的になっており、PCのUSBポートからも1Aの供給は殆ど可能な状態でした。これはバスパワー型の外付けHDDなどが1Aを必要としたためです。このためスマートデバイスは5V/1Aの供給を前提にしたところから始まり、これで動作時の電力と充電の電力を同時に賄うように設計されました。一部の古いPCは500mA以上の電流を流すとUSBポートや本体がシャットダウンして給電が停止することもありました。USBポートのコネクタも5V/1A以下に規定されており、これが上限でした。AppleもiPad第3世代まで、iPad mini2まで、iPhone5までは5V1Aのいわゆる低速充電仕様です。

第一期 急速充電(5V/1.5A~2.4A)時代

スマートデバイスの高性能化により本体の消費電力とバッテリーの容量が増大してきたため、5V/1Aでは足りなくなりました。このため同梱するACアダプターの容量アップが行なわれましたが、この場合もユーザーが旧来の5V/1Aや、PCのUSBポートへの接続をすることを考慮する必要がありました。スマートデバイスが見境無く大電流を要求すると、旧来のACアダプターやPCを破損してしまうからです。保護回路がある場合は、一旦AC電源を切断してみたり、少し放置してポリスイッチの回復を待つことで復旧しますが、完全に壊れてしまうこともあります。スマートデバイスとACアダプタをつなぐUSBケーブルには4本の線(電源2本、信号2本)しかなく、これだけを使って判別する必要があります。事前に1.8Aの供給能力があるかどうかをスマートデバイス側で判別する必要があり、これをデータラインでのハンドシェイクで行なうエニュメレーション(接続認識)か、通信を行なわず端子のD+とD-の状態でハード的に認識するどちらかの方法で行なわれます。

Qualcomm Quick Charge 1.0

Qualcommが「Quick Charge 1.0」と呼ばれる急速充電技術を、買収したSummit Microelectronics社から取得し、2012年から展開しているのが5V/1.8A仕様です。これに合わせてUSBコネクタメーカーも仕様を改善し1.8Aまでの電流に耐えられる製品を提供開始しました。ドコモはこの技術を元に「急速充電」という名称で国内展開し、5V/1.8A充電が一般的になりました。 

Apple独自法式

急速充電においても、Appleは当然ながら独自の方法を取っています。Appleにおいても、同様に既存の5V/1AやPCのUSBポートからの給電を想定しなければならず、ACアダプターの給電能力の判別が必要です。Appleは下記の回路をACアダプター側に持たせ、D+/D-信号ラインの電圧レベルを抵抗値を変更することで変化させ、それをiPad/iPhoneが読み取ることでACアダプターの供給能力を判別しています。現在Apple純正には5W、10W、12Wの3種類のACアダプターがあり、その判別を行ないます。

USB Battery Charger (BC) revision 1.2

USBの規格が拡張され、CDP(Charging Downstream Port)とDCP(Dedicated Charging Port)の2つのUSB給電(急速)が定められ、前者はデータラインのハンドシェイク、後者はD+とD-ピンの短絡で判別を行い、どちらも最大1.5Aの供給が可能であるか判別します。

Samsung Galaxy Tab 2A mode

SamsungのGalaxy TabはBC 1.2のDCPと同じ方法で判別を行い、2Aの供給を求めるため、専用の充電器が必要です。BC1.2互換の1.5A供給のアダプタを使うと供給能力に問題があります。

Anker SmartIQテクノロジー

Anker社が独自技術として各USBポートは接続された機器を自動的に検知し、機器毎に適した最大のスピードで急速充電を行うことが可能と唱っており、夢のようなインテリジェントな充電技術だという誤った評価解説が目立ちますが、これは正しくありません。充電中の電流の推移を実際にモニターしてみると、それが変化はしますが、Ankerの充電器からスマートデバイス機器に内蔵しているバッテリーの様子を見ながらインテリジェントに電流量を調整しているということではありません。充電電流を決めているのはあくまでもスマートデバイス機器側であり、Ankerの充電器は上記の仕様に従い、各ポートが急速充電に対応しているという応答を最初にしているだけです。充電電流が変動するのは、あくまでもスマートデバイス側が引っ張る電流容量が変化するのに従っているものです。バッテリーの充電状態や、本体の動作状況により電流値は変動しますが、あくまでAnkerが制御しているのは、各ポートの最大電流容量と、全ポートの同時使用可能電流容量だけであり、これを越えると安全回路によりシャットダウンします。これだけのことなので、特にインテリジェンスもなく、単に各社の急速充電に対応してると返すだけのものですが、デザイン性は良いので、それなりに便利です。各社の急速充電に対応してると返すことに関しては100%ではないので、急速充電にならないこともありますし、SmartIQ製品はQuick Charge2.0には対応しておらず、それには専用の製品を出しています。

第二期 急速充電時代

更なる電力容量アップに対して、給電電流を増やしていくのは限界に達しており、9V/12V/20Vというように5Vから電圧を上げた給電を行なう試みが始まりました。USBの電源はずっと5Vで統一されてきたので、これを機器間のネゴシエーション後に電圧を上げるというのは大胆な試みですが、何の障害も起こさずに展開できています。

Qualcomm Quick Charge 2.0

先んじたのはQualcommで、「Quick Charge 2.0」という名称で展開しており、ドコモの「急速充電2」もASUSがZenfone2から開始した「Boost Master」もこの仕様に元づくものです。例えばZenfone2に付属の急速充電器で、ドコモの「急速充電2」に対応したスマホを電圧を上げて充電することができます。au・SoftBankの「Quick Charge 2.0」も同一規格であり、ドコモ、au、SoftBank、Zenfone2は相互に充電器を入れ替えて使うことができます。

 AnkerのQuick Charge 2.0対応品(SmartIQ非対応)
Ankerの中国コピーメーカーながら、Qualcomm認定で先んじて発売したAukey  
 ドコモ純正品 (ケーブル着脱出来ず、デザイン的にも見劣り)
docomo ACアダプタ05 急速充電【 ドコモ純正】

docomo ACアダプタ05 急速充電【 ドコモ純正】